日本旧石器学会
日本列島の旧石器時代遺跡

鈴木遺跡 Suzuki site
後期旧石器時代 前半〜後半 35,000年前〜15,000年前

1 位置  Googleマップ

 武蔵野台地のほぼ中央、東京都小平市の東部、石神井川源流谷頭部を馬蹄形に囲んで形成された後期旧石器時代の遺跡。東京都指定史跡。総面積約22万uと、都内では最大級の面積を有する。標高約73〜75mの武蔵野段丘上に位置し、約2km南には野川流域の遺跡群が展開する。JR中央線武蔵小金井駅、国分寺駅、西武新宿線花小金井駅、小平駅等からバスでアクセスできる。

2 発見の経過

 1967年に発見され、回田遺跡と名付けられていたが、1974年6月末、現在の鈴木小学校の校地造成工事に伴って江戸時代の水車小屋に伴う水路や暗渠が発見されたことを契機に試掘調査が行われ、正式にその存在が確認された。その後、鈴木小学校の西を南北に走る都道2・1・3号線地点、御幸第I地点をはじめ、50以上の調査地点で範囲確認調査を含む発掘調査が行われている。

3 石器群の概要


 各調査地点では立川ロームV〜]層の間に都合12枚の文化層が確認され、多数の礫群や配石、石器集中部のほか、炉穴等の遺構も検出されている。石器、剥片類はナイフ形石器を中心に多量かつ多種で、その数約3万7000点に上る。とくに\〜X層を中心に検出された局部磨製を含む20点以上の打製石器は特徴的である。中には刃部再生剥片と本体とが接合し、最終的に刃部が約一センチ後退したことを示す資料や、局部磨製石斧1点と打製石斧3点とが埋納遺構のようにまとまって検出された例もある。また石材として黒曜石の比率が高いことも特徴で、武蔵野台地における石材獲得の拠点的な位置を占めていたとする見方もある。

 石器群の変遷を層位別にみると、局部磨製石斧・ナイフ形石器に代表されるX〜Z層、石刃技法によるナイフ形石器の卓越するY層、各形態のナイフ形石器の盛行するV〜W層、尖頭器・細石刃中心のV層となる。また居住領域の時期的なあり方をみると、X層期に開始された居住は、\・Z層期に広い分布を示すが、姶良丹沢(AT)火山灰降灰前後(Y・V層期)にいったん縮小し、W層期に再び広範囲の分布を示すようになる。遺跡は旧石器時代最末期になると衰微の傾向を示す。

 遺跡の一角には鈴木遺跡資料館があり、各種の剥ぎ取り標本や出土遺物の保存、公開を行っている(12月27日から1月5日の年末年始を除く、水・土・日曜日、祝休日が開館日)。
鈴木遺跡資料館紹介のサイト(小平市のホームページから)

(写真提供 小平市教育委員会)


用語

立川ローム層 今から3.5万−1.5万年前に堆積した火山灰などからなる地層。
炉穴熱源として利用するために木材等を燃焼したと考えられる穴の跡で、中に多量の炭化物片が含まれている。
礫群たき火によって拳大ほどの石を多数加熱し、肉などを焼いたり蒸したりしたと考えられる一種の調理場跡。
黒曜石マグマが一定の条件下で冷却された際に生成される、黒色のガラス質の岩石。割れ口が鋭いことから、切削、刺突用の石器の素材として多用される。

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